月末の朝、封筒に溜めた請求書を1件ずつ会計ソフトに打ち込む
請求書や領収書は、誰かが手入力しますよね。会計ソフト(帳簿をつける道具)に入れます。中小企業では、社長か事務員さんが本業の合間に担いがちです。届いた紙は封筒や透明な書類ばさみに溜めます。月末にまとめて入力します。OCR(紙の文字を機械で読む仕組み)は昔からありました。
ただ、拾えるのは文字だけです。どの取引先の何の支出かは、その場で人が判断するしかありません。インボイス制度(消費税に関わる請求書の決まり)も始まりました。請求書ごとに登録番号を見る手間が増えました。免税事業者は、消費税を納める義務がない事業者のことです。
免税事業者の請求書は、番号のある請求書と扱いが違います。AI-OCRは、AI(人工知能)を使うOCRのことです。会計ソフトに初めから備わっています。freeeは2022年に読み取り精度を公表しました。読み取りが仕訳(取引を種類別に記帳すること)の下書きまで進んだ話です。
読み取りが仕訳の候補まで進み、2024年1月から電子保存が義務に
昔のOCRは文字を拾うだけでした。勘定科目や取引先は、人がゼロから判定していました。今はAI-OCRが金額やインボイス番号を読み取ります。そこから取引先を自動で結び付けます。勘定科目や消費税区分(消費税の扱いの分類)の候補も出ます。仕訳画面に並びます。
2024年1月からは、請求書の電子保存が法律で義務です。対象は、電子で受け取った請求書です。データ(電子情報)のまま保存します。紙に印刷して保存する運用は使えなくなりました。読み取りも保存も、同じ画面で終わります。ここが昔との違いです。
- 昔のOCRは文字を拾うだけ
- 勘定科目は人がゼロから判定
- 紙に印刷して保存していた
- AI-OCRが取引先をひも付ける
- 勘定科目の候補が仕訳画面に並ぶ
- 電子で受け取ったデータのまま保存
やると、こう変わる。freeeの標準機能で、人は確認と承認だけ
請求書や領収書を画像にすると、AIが読み取ります。読むのは取引先・金額・インボイス番号(事業者の登録番号)です。勘定科目(取引を分類する帳簿の項目)の候補も出ます。人は確認と最終承認をするだけです。freeeやマネーフォワードに初めから備わる機能で、すでに使えます。
いくらかかるか。月2,480円から、超過分は1件20円
- 相手
建設・卸・小売など、紙の請求書や領収書が多い会社向けです。社員6〜20人規模で、経理担当は社長か事務員1人が兼務します。月に数十件から百件程度の請求書を処理しています。空き時間に手入力している状態ですね。
- 売り方と価格
自社で入れるなら、会計ソフトの契約が土台です。freee会計は月額2,980円からです。マネーフォワード クラウド会計は月額2,480円からです。AI-OCRは上限件数を超えると、従量課金になります。1件20円前後です(両社の公式料金ページで確認)。
外部の業者に導入支援を頼む相場は、公開情報がありません。そのため、ここでは書きません。
- 必要なもの
freee会計かマネーフォワード クラウド会計を契約します。スキャナ(紙を画像にする機器)か、携帯電話の撮影機能も必要です。請求書・領収書を誰がいつ集めるかも決めます。簡単な決まりで十分です。最終確認と仕訳の承認をする担当者は、1人いれば足ります。
AIに任せられないのは、6工程のうち3つ
- 1金額と取引先を読み取る
- 2インボイス番号を読む
- 3勘定科目の候補を出す
- 4番号の適格性を確認
- 5免税事業者の扱いを決める
- 6勘定科目を最終承認
- AIに任せる線
AIは金額・取引先・インボイス番号を読み取れます。勘定科目・消費税区分の候補づくりも任せられます。ただ、任せられないところもあります。
インボイス番号の持ち主は、人が最終確認します。適格請求書発行事業者(インボイスを出せる登録済みの事業者)かを見ます。免税事業者からの仕入れの処理も、人が決めます。勘定科目の最終承認も人の仕事です。
- 詰まりそうな所
免税事業者からの仕入れは、経過措置(制度変更時の当面の特例)で扱います。控除(納める消費税から差し引くこと)は一部だけです。判断を誤ると税額が変わります。AIの候補をそのまま信じず、必ず人が確認してください。「うちは紙の方が早い」と言う社長ほど、この確認を後回しにしがちです。
最初の30日
- 1〜7日1か月分の請求書と領収書を読み込ませる
- 8〜14日読み取り精度と修正の手間を自分の目で確かめる
- 15〜30日インボイス番号は人が確認するルールを決める
精度98.5%と1件20円。公表されている数字
| 項目 | 値 | 誰の発表か・条件 | 扱い |
|---|---|---|---|
| 電子取引データ保存の義務化開始 | 2024年1月1日 | 国税庁。電子帳簿保存法・電子取引データ保存のページの記載(確認 2026-08-30) | 公式公表 |
| 免税事業者からの仕入れの控除割合 | 80% | 国税庁。経過措置の初期。インボイス制度の仕入税額控除の要件と経過措置(80%/50%)のページ(確認 2026-08-30) | 公式公表 |
| freee 最安プラン(OCRつき) | 月額2,980円 | freee。証憑OCR解析つき、ひとり法人・年払い。法人向け料金プランページの表示額(確認 2026-08-30) | 公式公表 |
| freee支出管理のOCR精度 | 98.5% | freee。sweeep社調べ、手書き含む。2022年のプレスリリースで公表された数値(確認 2026-08-30) | 第三者の調査 |
| マネーフォワード AI-OCR超過分 | 1件20円 | マネーフォワード。クラウド会計のAI-OCRオプション、上限超過分の従量料金。料金ページの表示額(確認 2026-08-30) | 公式公表 |
出典 国税庁公式サイトでインボイス制度と電子帳簿保存法(電子取引データ保存)のページを確認。freee公式の法人料金ページとAI-OCRのプレスリリース、マネーフォワード クラウド会計のオプション料金ページを確認。読み取り精度はfreeeの2022年プレスリリースにあるsweeep社調べの数値のみ確認でき、マネーフォワードの精度は公式ページに数値の記載がなかった。
- インボイス制度(適格請求書等保存方式)の概要、仕入税額控除の要件、免税事業者からの仕入れの経過措置(80%/50%)www.nta.go.jp(確認 2026-08-30)
- 電子帳簿保存法・電子取引データ保存の義務化時期(2024年1月1日から)www.nta.go.jp(確認 2026-08-30)
- freee AI-OCRの読み取り精度(sweeep社調べ98.5%)と対応プランcorp.freee.co.jp(確認 2026-08-30)
- freee会計 法人向け料金プラン(ひとり法人2,980円/月〜)とOCR搭載範囲support.freee.co.jp(確認 2026-08-30)
- マネーフォワード クラウド確定申告のAI-OCRオプション料金(1件20円)biz.moneyforward.com(確認 2026-08-30)
これを商売にするなら
AI-OCRは従量課金(読み取り件数に応じた料金)です。1件20円前後かかります。経理担当者の手入力を1件数分減らせるとします。時給に換算すれば、十分に元が取れます。freeeやマネーフォワードは、従量課金で収益を得ます。月額の契約料も収益になります。
人の手入力の時間は、AIの費用に置き換えられます。1件数十円の変動費(使う量で増減する費用)になります。電子帳簿保存法(帳簿などの電子保存の決まり)への対応もあります。証憑(取引の証拠になる書類)をデータのまま保存する作業が増えました。その分、AI-OCRを使うほど手間の差が開きます。
向いている会社
- 紙の請求書・領収書が月に数十件以上ある会社
- 経理担当が社長や事務員の兼務になっている会社
- 電子帳簿保存法のスキャナ保存・電子取引保存にこれから対応する会社
向かない会社
- 月の請求書・領収書が数件しかない会社
- すでに専任の経理が仕訳を高速でこなせている会社
- 取引先がほぼ同じ相手で仕訳がパターン化済みの会社
私は、条件つきでやる価値ありと見ています。読み取りと仕訳の下書きは、十分に任せられます。ただ、インボイス番号の登録状況は、人が確認します。勘定科目も、最後は人が判断します。AIの候補をそのまま通さないでください。ここを省くと、消費税の計算そのものが狂います。
自分の会社に当てはめると、どうなるか。
業種と人数を選んで、ひとつだけ答えてください。向き不向きと、その規模の会社での最初の30日が返ってきます。一度選んだ業種と人数は、次の記事でも覚えています。
例:建設・設備・6〜20人の会社で「はい」なら、向き度は高。理由が3行と、その規模での最初の30日が返ります。向かないときは、代わりに効く記事を1本すすめます。